#1月明かりの道
#1月明かりの道

 「素敵なマグカップですね」
 「どうぞ、僕もすみません」
 あえてマグカップの説明はしないで、
 かめくんはその一つを女性にわたすと、もう一つは
 自分のそばに置き、空になったお盆はそのまま近く
 のテーブルの上に置いた。
 「この通りにはよく来られるんですか?」
 この店が気になっていたと女性が言ったので、 
 かめくんは聞いた。
 「ええ、とは言ってもいつもは平日に決まった店に
 行って、あとはこの通りは、山の中腹にあるから
 景色がきれいでしょう?」

 MILUZDROPを出て左に二店ほど歩いていくと、
 通りの端の柵近くにベンチが設置してあり、そこか
 らは小高い山の真下に広がる海と、小さな港町が見
 える。そこで景色を楽しんでから帰るのが、この女
 性のおきまりのコースらしい。
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