「素敵なマグカップですね」
「どうぞ、僕もすみません」
あえてマグカップの説明はしないで、
かめくんはその一つを女性にわたすと、もう一つは
自分のそばに置き、空になったお盆はそのまま近く
のテーブルの上に置いた。
「この通りにはよく来られるんですか?」
この店が気になっていたと女性が言ったので、
かめくんは聞いた。
「ええ、とは言ってもいつもは平日に決まった店に
行って、あとはこの通りは、山の中腹にあるから
景色がきれいでしょう?」
MILUZDROPを出て左に二店ほど歩いていくと、
通りの端の柵近くにベンチが設置してあり、そこか
らは小高い山の真下に広がる海と、小さな港町が見
える。そこで景色を楽しんでから帰るのが、この女
性のおきまりのコースらしい。 |