#1月明かりの道
#1月明かりの道

 「では、わたしはこれで」と女性は言い、まるで
 わーちゃんとそらまめの店主に気づかれないように
 といった感じで、かめくんに軽く会釈をして
 帰ろうとしたが、何かを思い出したかのように
 かめくんの方へ体を向き直して言った。
 「今日は朝から、この通りにたくさんの人がいま
  したね」
 女性が不意にそう言ったので、かめくんの心は小さ
 く揺れた。
 「まあ、そうですね。たまに込むときがあるみたい
  です。」
 「それで、思い出したのかもしれません。
  自分がかつて大勢の人と関わっていた時の事を」
   
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