「さあ、そろそろおいとましないと」
女性はそう言うと、すっかり疲れは取れた様子で立
ち上がり、
「今日は本当にありがとうございました。色々とす
みません」といって、かめくんに頭を下げた。
かめくんもあわてて立ち上がり、
「いえ、こちらこそ色々とありがとうございます」
といって、テーブルの上の綺麗な緑色の古本を、
大切そうに抱えた。
「お忙しいでしょうから、ゆっくり読んで下さい
ね。今日だってご商売のお邪魔だったんじゃない
かしら?本当にごめんなさい」
「いえ、いつもお昼以降はこんなもんです。
もう一人店の者もいるんですが、朝から買い出
しに出かけたきりだし・・・」
女性が申し訳なさそうな様子なので、かめくんは何
でも無いといった感じで言い、店の扉を開け女性を
促すと、ついでに通りを左右に眺めた。 |