#1月明かりの道
#1月明かりの道

   「さあ、そろそろおいとましないと」
 女性はそう言うと、すっかり疲れは取れた様子で立
 ち上がり、
 「今日は本当にありがとうございました。色々とす
  みません」といって、かめくんに頭を下げた。
 かめくんもあわてて立ち上がり、
 「いえ、こちらこそ色々とありがとうございます」
 といって、テーブルの上の綺麗な緑色の古本を、
 大切そうに抱えた。
 「お忙しいでしょうから、ゆっくり読んで下さい
  ね。今日だってご商売のお邪魔だったんじゃない
  かしら?本当にごめんなさい」
 「いえ、いつもお昼以降はこんなもんです。
  もう一人店の者もいるんですが、朝から買い出
  しに出かけたきりだし・・・」
 女性が申し訳なさそうな様子なので、かめくんは何
 でも無いといった感じで言い、店の扉を開け女性を
 促すと、ついでに通りを左右に眺めた。
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