#1月明かりの道
#1月明かりの道

 「あら、ごめんなさい。私ったら何だか子供みたい
  に・・・」
 しばしの沈黙の後、女性はかめくんに申し訳なさそ
 うに言った。
 「いえ、でも僕には演劇のことはよく分からない 
  けど、あなたが楽しく演じることが出来てとても
  良いお芝居になったのなら、それが一番なのでは
  ないですか?」
 かめくんがそう言うと、女性は感情の起伏が激しい
 女学生のような様子から一転して、もとの
〔初老の女性〕といった落ち着いた表情でほほえみ、
 まっすぐにかめくんを見た。
 泣いているような不思議な笑顔は、もうどこに
 も見受けられなかった。 
  
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