#1月明かりの道
#1月明かりの道

 女性は、大笑いの余韻を残しながらも、
 やはり自分の過去の出来事を少し気にしている様子
 だった。
 「それは脚本の方が、という事ですよね?」
 返答に困ったかめくんは、間の抜けた様子で女性に
 聞いた。
 「もちろん、だって小説家の方はもっと昔の時代の
  人だもの。少し変に思われるかもしれないけど、
  あの時はとても良い作品だと思って本当に感動し
  ていたから、何だかだまされたみたいで今更くや
  しくなって来たわ」
 そう言うと女性は片肘をつき下唇をかんだ。
 その様子を見ていたかめくんは、それは偶然の一致
 もしくは、オマージュ作品というのではないのだ
 ろうか、という疑問が微かにわき上がったが、
 そこは女性の過去の出来事、何かはかりしれない複
 雑な理由があるのかもしれないと思い直し、
 黙っていることにした。
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