#1月明かりの道
#1月明かりの道

 「ありがとう、そんなふうに言ってくれて、でも
  好きなことをやっていただけなんですよ」
 女性はそう言うと、ぎこちない動作でお茶をすすっ
 た。
 「黄色のイメージカラーが出てくるお芝居って、
  どのようなお話なんですか?」
 静寂な空気に包まれた店の中で、かめ君の声は、 
 くっきりとした形を持って響いた。
 時間は正午をとっくに過ぎ、窓の外からは、夕焼け
 を予言させるかのようなオレンジ色の光がこぼれて
 いた。
 「・・・もう、随分前の話なんだけれど」 
 女性はそう聞かれるのを分かっていたかのように頷
 きながら話を続けた。
 
  
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