#1月明かりの道
#1月明かりの道

 かめくんは、もちろん女性が泣いているのでは無
 く 、これは自分の言動が好意的にとらえられている
 という証拠なのだ(照れ隠しのような、とにかく
 それは笑顔には違いなかった)と、
 どこかで分かってはいたのだが、その時なぜかこの
 女性が、ある物事について誰かの答えを求めている
 かのように思えてならないのだった。

 先ほどからこの女性にたいして、気の利いたことを
 一つも言えないと感じていたかめくんは、
 女性にとって自分がただの通りすがりの人間でしか
 ないということを自覚されられて、少し悔しい気持
 ちになった。
 それほど彼女に対して不思議な親近感が沸いていた
 のである。
  
-17-