#1月明かりの道
#1月明かりの道

 「演劇、ですか なんと言って良いのか、でもとて
  も格好いいなと思います。舞台の役者だなんて」
 かめくんは思っていることを正直に話してみたつも
 りだったが、その声の響きに物事の本質をつかめて
 いない(軽さ)のような物を感じ、もう一度この
 女性に何か言い直したいような衝動に駆られたが、
 もちろん何も良い言葉は思いつかず、あとはもう
 ただ黙っていた。
 その時女性はこれまでも、ほほえむと少し泣きそう
 に見える不思議な表情を見せていたが、今度こそ本
 当に泣いているんじゃないのだろうか、という顔で
 かめくんを見た。
 
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