#1月明かりの道
#1月明かりの道

 「この話の主人公は、とある道に生えた一本の雑草
 なんだけど、この雑草が生えている道は何も無い、
 本当に何も無い、人さえめったに通らないような道
 なの、そしてその雑草にとって自分が見ることの
 出来る唯一の美しい物が、夜になると空にあらわれ
 る月で、その雑草は毎日幸せな気持ちで夜になるの
 を待ち、いつまでも月を眺め続ける」
 かめくんが真剣に相づちを打つのを、女性は横目で
 ニヤリと笑いながら続けた。
 「でもね、この雑草はそんな唯一の希望の光のよう
 な月を、次第にものすごく恨んで、嫌ってしまうよ
 うになるの。自分がこんな所に生まれたのはみんな
 この月のせいなんだって」
  
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