#1月明かりの道
#1月明かりの道

 「へえ、そうなんですか」
 かめくんは感心しきりで言ったのだが、女性にはそ
 れがあまり興味がなさそうに聞こえたのか、
 慌てて付け加えた。
「でも、昔の作品さながらの情熱的な部分もちゃんと
 残っているのよ。」
 「へええ」
 やっぱりかめくんは感心しきりである。
 女性は手強い敵に挑むような感じで身を乗り出し、
 かめくんに読ませるように、あるページを開いた。
 「たとえばこの話、これはなかでもちょっと変わっ
 ているの『月明かりの道』っていうタイトルのお話
 なんだけど・・・」
 女性はかめくんのほうへちらと目をやり、その話に
 確実に興味を向けられているのを見届けてから、
 満足そうに話を続けた。
  
-10-