「へえ、そうなんですか」
かめくんは感心しきりで言ったのだが、女性にはそ
れがあまり興味がなさそうに聞こえたのか、
慌てて付け加えた。
「でも、昔の作品さながらの情熱的な部分もちゃんと
残っているのよ。」
「へええ」
やっぱりかめくんは感心しきりである。
女性は手強い敵に挑むような感じで身を乗り出し、
かめくんに読ませるように、あるページを開いた。
「たとえばこの話、これはなかでもちょっと変わっ
ているの『月明かりの道』っていうタイトルのお話
なんだけど・・・」
女性はかめくんのほうへちらと目をやり、その話に
確実に興味を向けられているのを見届けてから、
満足そうに話を続けた。
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