#1月明かりの道
#1月明かりの道
 
 ひとときの静寂の中、鉱物がたくさん入った
 ガラスケースに囲まれたレジの前の椅子に座り、
 かめくんはいそいそと手元にあった小さな水晶の
 かけらを磨き始めた。
 
 カラン、と遠慮がちにドアベルが鳴った。
 気がつけば無心になっていたかめくんは、    
 慌てて音がする方へと顔を上げた。
 
 「い、いらっしゃいませ・・・」
 階段を一段踏み外すようなぎこちなさでかめくんが
 声をかけると、何故か気まずそうにそこに立ってい
 た初老の女性は、ただ疲れているのか、あるいは泣
 きそうにも見える不思議な笑顔をみせた。
  
-4-